日本語で読める韓国の本

邦訳された韓国の小説や詩などの文学作品をはじめ、実用、絵本などさまざまな分野の邦訳本をご紹介します。

マンヒのいえ

 6月26日に東京堂ホールでトークイベント及び作品展が開催されるクォン・ユンドク作家の絵本『マンヒのいえ』(みせ けい訳 セーラー出版)をご紹介します。 この絵本は、作家のクォン・ユンドクさんが、ご子息のマンヒくんとマンヒくんの祖父母の家をモデルにして作成したものです(マンヒくんは、今はもう27歳の好青年です)。 狭いアパートに住んでいたマンヒとお父さん、お母さんは、おじいちゃん、おばあちゃんの家に引っ越します。祖父母の家はとても広く、たくさん部屋があります。新しい家での生活やそれぞれの部屋、庭の様子が、やさしい色...

2016-05-26 (木)

はじめて読むじんぶん童話シリーズ④

 はじめて読むじんぶん童話シリーズの4作目『ソクラテスのいるサッカー部』(キム・ハウン著 崔 真碩訳)をご紹介します。 サッカーが大好きなトンヨンは試合に勝つことだけにこどわっています。サッカー部の監督としてトンヨンの前に現れたソクラテスと、サッカーの授業を通して、うわべだけでない本当の実力を身につける方法、自分一人ではなくみんなと一緒にするサッカーを学んでゆきます。 『ソクラテスのいるサッカー部』                            「幸せは徳でつくるものだ。徳があって初めて幸せなんだ。きみがゴ...

2016-05-22 (日)

はじめて読むじんぶん童話シリーズ③

 はじめて読むじんぶん童話シリーズの3作目『アリストテレスのいる薬屋』(パク・ヒョンスク著 古川綾子訳)を紹介します。 自分よりも体が大きく、何でもできるふたごの弟ジョンウに負けるのが悔しくて、いつもかんしゃくを起こしているソンウ。周りの人と仲良くなって、心から幸せになれる方法を、アリストテレスおじさんから学んでいきます。『アリストテレスのいる薬屋』       ジョンウとぼくはふたごなんだ。ぼくが1分早くこの世に出てきたから、お兄ちゃんになった。でも、お兄ちゃんだからって、いいことはない。弟のジョンウはぼくより背...

2016-05-08 (日)

はじめて読むじんぶん童話シリーズ②

 前回に引き続き、『はじめて読むじんぶん童話シリーズ』(彩流社刊)から『シェイクスピアのいる文房具店』(シン・ヨンラン著 小栗章訳)をご紹介します。 お父さんが失業したり、友達との仲が悪くなったり、悩みの多いビンナムはシェイクスピアと出会い親しくなります。本を通じて想像力を養い、その想像力が苦悩を乗り越える糧となることを学ぶ成長物語です。『シェイクスピアのいる文房具店』                                    〈まさか、パパの話していたシェイクスピアが、このおじさんだなんて?〉 ビンナ...

2016-04-09 (土)

はじめて読むじんぶん童話シリーズ①

 韓国では近年、すばらしい児童書が数々出版されていて脚光を浴びています。『日本語で読みたい韓国の本-おすすめ50選』でも児童書を紹介してきていますが、その中から翻訳、出版された作品もあります。彩流社から出版されている『はじめて読むじんぶん童話シリーズ』もそのような作品のひとつです。 本シリーズは、哲学を始めとする文学・芸術などの分野で、大いなる 実績を残した偉人たちが子どもたちの隣人となり、子どもたちの悩みを聞きながらさまざまな知恵をつけるコンセプトの童話です。偉人たちを、身近なおばさんやおじさんに据えておくことで...

2016-04-03 (日)

本でつくるユートピア

 塩野七生氏よる『ギリシア人の物語』の刊行が昨年末スタートしました。不朽の名作『ローマ人の物語』は、韓国でもハンギル社より1995年から2007年にかけて刊行されてベストセラーとなりました。その人気ぶりは、塩野七生氏と行くローマツアーが開催されたほどです。翻訳・刊行からロングセラーに至る経緯、韓国読者の驚くべき反応について、『本でつくるユートピア 韓国出版 情熱の現代史』(金彦鎬著 舘野晢訳 北沢図書出版)に詳しく書かれています。「当初、塩野七生先生の本を企画したとき、ハンギル社の著者や知識人たちは否定的だった。果...

2016-03-27 (日)

菜食主義者

 『菜食主義者』(韓江著 きむ・ふな訳 クオン)は、「菜食主義者」、「蒙古斑」、「木の花火」という三つの連作中編小説集です。 「特別な魅力がないのと同じように、特別な短所もない」ヨンヘは、結婚生活5年目のある日突然、怖い夢を見たことから菜食主義者となります。ヨンヘの夫をはじめ、実家の両親など家族は、痩せる一方のヨンヘに対し菜食主義をやめさせようとしますが、肉食を拒み続けるヨンヘは精神に異常をきたし、木になりたがります。 「菜食主義者」は夫の視点から、「蒙古斑」ではヨンヘの姉の夫の視点から、「木の花火」はヨンヘの姉の...

2016-03-19 (土)

魔人②

訳者の祖田律男さんのあとがきによれば、『魔人』に対する当時の人気ぶりは、「朝鮮日報」への連載終了後、2か月で単行本として刊行され、5年間で18刷を記録するという驚異的な反響からうかがい知ることができます。探偵小説として初めてベストセラーとなった作品ですが、大反響を呼んだ理由として、作品中の世界的な舞踏家孔雀夫人こと朱恩夢(チュ・ウンモン)のモデルが、朝鮮出身の人気舞踏家、崔承喜であったことが挙げられます。金来成と崔承喜は年齢も近く、金来成は早稲田への留学経験があり、崔承喜も東京でモダンバレエを学ぶなど共通点もありま...

2016-03-05 (土)

魔人

  時刻は午後八時ごろ。街はすでに夜の帳がおり、色とりどりのネオンサインがきらめいていた。 三清洞を出発した二台の車はたった今、鐘路十字路を過ぎ、南大門へ向かって走っていた。前を行くタクシーには呉相億と恩夢が乗り、任警部と文學洙を乗せた警察車はその後ろを五十メートルほど離れて走るのだった。 「海月は絶対に恩夢を傷つけはしない。でも、恩夢の身辺から一時でも監視の目を怠ってはならない」 窓の外のネオンサインをじっと見やりながら、任警部は昨夜劉不亂が電話で話した内容を思い起こしてみるのであった。それは実際、任警部にとって...

2016-02-01 (月)

朝鮮引揚げと日本人―加害と被害の記憶を超えて

『日本語で読みたい韓国の本-おすすめ50選』で紹介した作品から、実際に翻訳、刊行に至ったものも多くあります。 昨年12月に刊行された『朝鮮引揚げと日本人―加害と被害の記憶を超えて』(李淵植著、舘野晢訳 明石書店)もそのような本の1冊です。 大陸や朝鮮半島からの引き揚げ時における想像を絶する苦労については、たくさんの手記や小説に書かれていて、『流れる星は生きている』(藤原てい著)、『竹林はるか遠く―日本人少女ヨーコの戦争体験記』(ヨーコ・カワシマ・ワトキンス著 都竹恵子訳)などが有名です。 これらの手記が個々の苦労に...

2016-01-25 (月)