『アオイガーデン』の著者である作家ピョン・ヘヨンさんに、作品やプライベートについて聞いてみました。
Q 私は法律事務所にも勤務しているせいか、小説を読んでいても「事実は小説より奇なり」と、冷めた目で読んでしまうことがありますが、ピョン・ヘヨンさんの現実にも起こりそうで起こらなさそうな、ファンタジーのような不思議でグロテスクな世界は、これぞ小説ではないかと感じることができました。
A そうですね。例えば、DVで悩んでいる女性がいたとして、私が言葉を尽くしてどんなにその心の痛みを表現したとしても、その女性は私の表現以上の痛みを抱えているかもしれません。だから、私は現実世界を再現してその痛みを表現するのではなく、日常から離れた視点から、痛みや、人間の本性や理不尽さを表現したいと思っています。
Q 『アオイガーデン』を書くとき、経験したことのないもの、見たことのないものを想像して書かなければならなかったから大変だったとチェッコリのイベントでおっしゃっていましたが、参考にした本などあるのでしょうか。
A 映像を見て、参考にしました。
Q 結婚されていると伺いましたが、会社で勤務されているときは、どのようにして仕事と、家事と、小説を書くことを両立されていたのですか?
A 小説は仕事から帰ってきてから書いていました。もともと、家事は余り得意でなくて、食事も惣菜などを買ってきて食べる方です。身の回りのことはするのですが、全体を整理するのはとても大変で、3年前、散らかった部屋を何とかするには、引っ越しをすればいいのではと思ったんです。早く家を手放すには、内覧をしてもらって売らなければならなかったのですが、余りにも散らかっているので、引っ越しをする前に部屋を片付けなければいけない羽目になってしまいました。引っ越しのアイロニーです。
(韓国では人がまだ住んでいる状態で、内覧をしてもらうようです)。
Q 小説家になろうと思ったきっかけは何ですか?
A 村上春樹さんのような、きらきら輝いたドラマチックなきっかけがあったわけではないんです。もともと文章を書くことが好きで、文章を書く講座で勉強を続けているうちに小説を書くようになりました。
(村上春樹さんが野球を観戦中に小説家になろうと思い立ったエピソードは、韓国でも有名のようです。)
Q 日本の作家の作品で読んだことのある作品は何ですか。
A 村上春樹、大江健三郎、丸山健二、三島由紀夫、太宰治、いろいろ読みました。吉田修一も好きです。妻夫木聡さん主演の映画「悪人」が面白くて、すぐに原作も読みました。韓国では、直木賞や芥川賞を受賞した作品はすぐに翻訳されて、刊行されます。『コンビニ人間』も読みました。
Q 前の世代の作品と、みなさんの世代の作品は作風が異なりますが、前の世代の作品についてどう思われますか。
A 私たちは先輩たちの作品を読んで影響を受け、小説の魅力を感じてきました。先輩たちが作ってきた道を私も歩んでいると思っています。呉貞姫さんの短編小説などはとても深みがあり、いい作品です。
Q これからどんな作品を書きたいと思っていますか?
A 書いたことのない作品を書こうと思っています。
(インタビュアー:五十嵐真希)