2017年ベストセラーランキング

82年生まれ

 2018年も1月半ばとなりました。1月20日から、第4回日本翻訳大賞の読者からの推薦受付も始まります。2017年は様々な韓国文学の邦訳本が刊行され、また、当会でK-BOOK読書ガイド『ちぇっく CHECK』を刊行したこともあり、多くの書店で韓国文学フェアが開催されました。注目を集めはじめた韓国文学の本が日本翻訳大賞に多く推薦されることを期待しています。

 さて、韓国の2017年はどんな本が人気を博したのでしょうか。韓国の書店「教保文庫」と「YES24」で発表された集計記事から2017年のベストセラーをのぞいてみようと思います。

 2017年は、両書店で同じ書籍が1~3位にランキングされる結果となりました。

  まず第3位となったのは、精神科医ユン・ホンギュンによる『자손감 수업 (自尊感情の授業)』。傷ついた自尊感情を回復させ、さらに高めるための具体的な方法や秘訣を伝授する本書は、昨年のベストセラーランキングでも上位にランキングされており、疲れた現代人の心を癒す手引書として、根強い人気を誇っています。また、そのほかのヒーリング・自己啓発関連書籍として、日本のロングセラー漫画『ぼのぼの』(著:いがらしみきお、竹書房)にこめられた大人へのメッセージを読み取り、「頑張りすぎない生き方」の素晴らしさを描いた『보노보노처럼 살다니 다행이야 (ぼのぼのみたいに暮らしてるとは、何よりだね)』(文:キム・シンフェ/画:いがらしみきお)も教保文庫で7位、YES24で17位にランクインしています。

 第2位にランクインしたのは、チョ・ナムジュによる小説『82년생 김지영(82年生まれのキム・ジヨン)』。主人公キム・ジヨンを通して、韓国の女性が直面している社会問題、特に、就職、結婚、出産や育児によりもたらされる不条理な性差別や苦難を鋭い観察眼で描き出し、女性を中心とした多くの読者の心をとらえました。毎年YES24で行われている読者による人気投票でも1位を獲得し、「キム・ジヨンブーム」まで巻き起こした本書は、韓国社会に潜む、そして巣くう性差別問題に社会の目を向けさせることに一役買ったと言えそうです。

 そして、ベストセラーランキング第1位に輝いたのは、作家であると同時に出版社代表としても活躍するイ・ギジュの『언어의 온도 (言葉の温度)』。昨年12月に当会で発行した『日本語で読みたい韓国の本―おすすめ50選』第6号でも紹介している本書は、「言葉には、それぞれがもつ『温度』がある」と語る著者が、町中でふと耳にした心あたたまる会話、映画などで出会った「言葉」にまつわる興味深い文章やエピソードなどを紹介し、これらの言葉を味わうことで自分の言葉を振り返るきっかけともなる一冊です。「そして父になる」や「深夜食堂」など日本の作品も登場しますので、日本の皆さんも面白く読めるのではないでしょうか。昨年5月に出版された同著者による後続作『말의 품격 (ことばの品格)』も教保文庫で6位、YES24で11位にランクインしており、著者の人気の高さを窺えます。

 また、昨年は大統領弾劾、新大統領の選出という大きな出来事もあり、文在寅大統領が表紙を飾ったTIME誌『Time Asia(2017』がYES24の総合ランキングで4位にランクイン、また、2011年に出版された元国会議員のユ・シミンによる『국가란 무엇인가 (国家とは何か)』の改訂版が出版され教保文庫で11位、YES24で13位にランクインするなど、政治、社会関連の書籍に注目が集まったのも、2017年の特徴ともいえるでしょう。

 そのほか、映画やドラマの原作やノベライズ、テレビ番組を通じて人気を獲得した「メディアセラー」と呼ばれるジャンルも売り上げを伸ばしました。今月末の日本公開を待たれる映画『殺人者の記憶法』の原作小説『살인자의 기억법(殺人者の記憶法)』(邦訳『殺人者の記憶法』吉川凪訳 クオン)は教保文庫で9位、YES24で19位にランクインしました。また、コン・ユ主演のドラマ「トッケビ」で主人公が読んでいた本として注目を集めた詩集『어쩌면 별들이 너의 슬픔을 가져갈지도 몰라 (ひょっとしたら星があなたの哀しみを持っていくかもしれない)』(キム・ヨンテク著)が教保文庫で14位、YES24で7位にランクインしました。読むだけではなく、詩を書き写すことで、心を癒し、潤してくれるこちらの書籍の第2弾『어쩌면 별들이 너의 슬픔을 가져갈지도 몰라+ 플러스 (ひょっとしたら星があなたの哀しみを持っていくかもしれない+プラス)』は、『日本語で読みたい韓国の本-おすすめ50選』第6号でもご紹介しています。

 2018年の韓国は、パク・ミンギュをはじめ、ウン・ヒギョン、コン・ジヨンなど日本でも人気のある小説家が新作を発表する予定です。みなさまが1冊でも多くの素敵な本と出会えますよう、今年もK-BOOK振興会はたくさんの本を紹介していきます。

自尊感情の授業ぼのぼの82年生まれ

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