作家チョン・セランの愛読書と人物の描き方(韓国通信)

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50人の日常をさりげなく、深く描いた『フィフティ・ピープル』(斎藤真理子訳 亜紀書房)が人気の若手作家、チョン・セランさんのトークイベントが11月6日、ソウル市城北区にあるブックカフェ「buku」で開かれました。テーマは「本と私の距離」で、チョン・セランさんがここ数年で読んだ愛読書を紹介しつつ、人物の描き方などの創作秘話を披露してくれました。

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韓国の作家では、『誰でもない』(晶文社)や『野蛮なアリスさん』(河出書房新社)のファン・ジョンウンさんや、『ひとり』(三一書房)のキム・スムさん、ク・ビョンモさん、パク・ミンジョンさん、カン・ファギルさん、ペ・ミョンフンさんらの名前が挙がりました。そして、これらの作家の代表作ではないけれども自分の好みにぴたっとはまる作品として教えてくれたのが、パク・ミンジョンさんの『뷰티-풀』、ファン・ジョンウンさんの『대니 드 비토』(『파씨의 입문』に収録)、『예비군 로봇』(『예술과 중력가속도』に収録)など。

カン・ファギルさんについては「まだあまり知られていない作家さんですが、成長の過程を追いかけるのが楽しみ」と言い、ペ・ミョンフンさんについては「韓国ではSF小説の認知度が低いですが、英語圏で生まれていたらもっと評価されていたはず」とのこと。そう聞くと、ますます読みたくなります。ちなみに、近く大手出版社から『となりのヨンヒさん(仮題)』が邦訳出版されるチョン・ソヨンさんも注目の作家さんの一人だと話していました。

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ほかにも、アガサ・クリスティーやスティーブン・キングなどを最近よく読んでいるそうですが、実は、推理小説を書いてみたいのだとか。「100冊読めば1冊書けるはず」とチョン・セランさん。「特に、アガサ・クリスティーは人間の描写が細かくて気に入っています。自叙伝もおもしろく、自分の人生を編集して小説を書いていることがよくわかります」と話していました。ちなみに、たくさん気軽に読むために電子ブックを活用しているとのこと。旅行に出かけるときは、1000冊ぐらいダウンロードして持っていくのだそうです。

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もともと編集者で、作家のインタビューもしていたチョン・セランさんは、とにかく人に対する関心、好奇心が高く、インタビューの時は必ず、その人のいる「空間」はどんなところかが浮かび上がるよう、ディティールにこだわって話を聞いていたそうです。その時の取材メモを取り出しては、作品のキャラクターづくりに役立てているほか、結婚式や同窓会、合コン、還暦のお祝いなどにも積極的に参加して作品の登場人物の描写に活用しているとのこと。そこには必ずおもしろい人がいて、大体5、6人分の情報を集めて1人のキャラクターを描くそうです。そんな制作過程を頭に思い浮かべながら、チョン・セランさんの作品を読むと、またおもしろいかもしれません。(文/写真:清水知佐子)

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店内では、本の装丁に会わせたマカロン、「ブッカロン」も販売。