教保文庫、3月の月間ベストと新刊(韓国通信)

20190414雨傘

教保文庫の3月の月間ベストセラー(国内小説)をご紹介します。1月のベスト10に入っていた作品が6作含まれています。1位は不動のキム・ジヨンでした。今年のブッカー国際賞候補に選ばれた『日が沈む頃』と、2016年の同賞受賞作『菜食主義者』もランクインしていました。

1位:『82년생 김지영(82年生まれ/キム・ジヨン)』 チョ・ナムジュ著(民音社/2016.10.14) 

2位:『아몬드(アーモンド)』ソン・ウォンピョン著(チャンビ/2017.3.31) 

3位:『내게 무해한 사람(私に無害な人)』チェ・ウニョン著(文学トンネ/2018.6.30)

4位:『소년이 온다(少年が来る)』ハン・ガン著(チャンビ/2014.5.19)

5位:『쇼코의 미소(ショウコの微笑)』チェ・ウニョン著(文学トンネ/2016.8.10)

6位:『그들의 첫 번째와 두 번째 고양이 2019년 제43회 이상문학상 작품집(彼らの最初と二番目の猫 2019年第43回李箱文学賞作品集)』(文学思想/2019.1.16)

7位:『버선발 이야기(ポソンバル物語)』ペク・キワン著(オーマイブック/2019.3.15)

社会運動家で「統一問題研究所」の所長である著者による10年ぶりの新作長編小説。「ポソンバル」(足袋はだし、の意)と呼ばれる主人公を通して、著者の人生や哲学、思想を表現しています。

8位:『디디의 우산(ddの傘)』ファン・ジョンウン(チャンビ/2019.1.20)

第11回金裕貞(キム・ユジョン)文学賞受賞作『d』(発表当時のタイトルは『笑う男』)と、ウェブ連載で好評を博した『아무것도 말할 필요가 없다(何も話す必要がない)』の中編2篇を収録。2014年のセウォル号沈没事故や、パク・クネ大統領の弾劾へとつながった16~17年のろうそく革命といった社会的な出来事を背景に、個人の日常における「革命」の意味を模索します。

9位:『채식주의자(菜食主義者)』ハン・ガン著(チャンビ/2007.10.30)

10位:『해질 무렵(日が沈む頃)』ファン・ソギョン著(文学トンネ/2015.11.3)

成功を収めた60代の男性建築家と、アルバイトを掛け持ちしながら夢を追う20代の女性演劇家の二人の主人公が、交互に話者として登場します。「過去の世代が犯したことの報いとして与えられた現実を、今の若い世代が生きている」ととらえ、若者のために書いた小説です。惜しくも最終候補の6作には残りませんでしたが、今年のマンブッカー国際賞の一次候補13作に選ばれたことから再び注目を集めました。著者の邦訳作品は、『パリデギ-脱北少女の物語』(青柳優子訳/岩波書店)、『客人』(鄭敬謨訳/岩波書店)、『懐かしの庭』(青柳優子訳/岩波書店)、『張吉山』(鄭敬謨訳/シアレヒム社)など多数あります。

ブッカー国際賞コーナーも作られていました。『日が沈む頃』のほかに、アジア初の同賞受賞作『菜食主義者』や『少年が来る』、第12回金裕貞文学賞受賞作『작별(別れ)』といったハン・ガンの作品が並んでいました。

新刊コーナーには、キム・フンの散文『연필로 쓰기(鉛筆で書くこと)』(文学トンネ/2019.3.27)や、ク・ビョンモの連作長編小説『버드 스트라이크(バードストライク)』(チャンビ/2019.3.15)が紹介されていました。

今も原稿を鉛筆で書くことで知られる作家キム・フンの執筆部屋の黒板には「必日新(毎日新しくならねばならない)」「必日五(毎日五枚ずつ書く)」という文字が書いてあるそうです。『연필로 쓰기』はそんなキム・フンが3年半かけて完成させた「鉛筆で書くこと」についての散文で、その分量は200字原稿用紙1,156枚に上ったとか。著者の代表作『흑산(黒山)』は戸田郁子さんの訳でこの秋、クオンから日本語版が刊行予定です。邦訳された歴史小説『칼의 노래』(『孤将』蓮池薫訳/新潮社)や『남한산성(南漢山城)』、『화장(火葬)』はドラマや映画にもなりました。

7年余りの年月を経て完成したク・ビョンモの『버드 스트라이크』は、翼を広げて空を飛び、傷ついた生命を翼で癒やすことのできる「翼人」たちと、彼らの間で成長し、新しい明日をつくっていく主人公の姿を、13篇の連作で描いています。日本でも話題のフェミニズム小説集『ヒョンナムオッパへ』(斎藤真理子訳/白水社)にも、著者の「ハルピュイアと祭りの夜」が収録されています。(文・写真/牧野美加)

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