はじめて読むじんぶん童話シリーズ③

 はじめて読むじんぶん童話シリーズの3作目『アリストテレスのいる薬屋』(パク・ヒョンスク著 古川綾子訳)を紹介します。
 自分よりも体が大きく、何でもできるふたごの弟ジョンウに負けるのが悔しくて、いつもかんしゃくを起こしているソンウ。周りの人と仲良くなって、心から幸せになれる方法を、アリストテレスおじさんから学んでいきます。

『アリストテレスのいる薬屋』      51EuD-ZuX3L._SX357_BO1,204,203,200_

 ジョンウとぼくはふたごなんだ。ぼくが1分早くこの世に出てきたから、お兄ちゃんになった。でも、お兄ちゃんだからって、いいことはない。弟のジョンウはぼくより背も高いし、体格(たいかく)もいい。みんなの言葉を借(か)りるなら、ジョンウとぼくは完全(かんぜん)に同じだけど、何となくジョンウのほうがカッコいいらしい。
それだけだったら何も言わない。勉強ができる良い遺伝子(いでんし)までもジョンウのほうに行ったのか、ぼくより勉強もできるんだ。ジョンウの成績(せいせき)は、4年生でトップ。(中略)
 ママはジョンウが望(のぞ)むならお空の星でも取ってあげそうな勢(いきお)いだ。そしてぼくは、ジョンウと正反対のあつかいを受けている。
 「ぼくは生まれたらいけないのに、まちがえて生まれてきちゃったのかな?」
時々、そんな気がして一人で悲しくなる。(本文12ページから14ページ)

 「わたしが思うに、きみは自分のことを低く評価(ひょうか)しすぎるようだ。きみの努力(どりょく)よりもずっと低く。自分の能力(のうりょく)を大げさに評価(ひょうか)していばるのも問題だが、自分を低く評価(ひょうか)しすぎるのも良くないな。すべてに自信(じしん)がなくなり<自分はどうしてこうなんだろう?>といつも自分を責(せ)めるようになるからだ。この前、中庸(ちゅうよう)の徳(とく)について話しただろう? あれから中庸(ちゅうよう)の徳(とく)を実践しようと努力してみたかね?」
おじさんが心配そうにぼくをみつめた。ぼくはこれまでのことを話した。ジョンウと仲(なか)良くなったという言葉を聞くと、おじさんの顔が明るくなった。
 「人は自分自身にプライドを持たなければならない。プライドを持つと<自分はすごいことをやる人>だと自分を信(しん)じるようになるし、本当にそうなれるものなんだ。(中略)ソンウは自分へのプライドが足りないようだ。<プライド>も中庸(ちゅうよう)の徳(とく)。<いばる>のと<いじける>の中間ということさ。今日からは<ぼくは元からできない、しょうがないさ>という心は捨(す)てて、<ぼくはできる。やってみせる>、こう考えてごらん」(中略)

 おじさんの言葉を聞くと、ぎゅうぎゅうにつまって苦しかった心が少しずつほぐれていった。(本文132ページから133ページ)

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