ヤーンヤーン

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原題
얀얀yarnyarn
出版日
2011年11月22日                             
発行元
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ISBN-13
9788996257530
頁数
47 
判型
270×255m

主人公の編み物のシーンが印象的な絵本を紹介します。かわいらしいだけでなく、読み終わると心がほっこりあたたかくなる、大人も楽しめる絵本です。

●概略 

 このかわいらしい絵本は、ソウルの街角のオシャレなカフェでコーヒーを飲みながらパラパラとめくりたくなるコーヒーブックです。
 桃の大好きなお母さんから生まれたヤーンヤーン。桃によく似たヤーンヤーンが話せる言葉は「ヤーンヤーン」の一言だけ。編み物の上手なヤーンヤーンは、どうしても編み物で作りたいものがある。月日がたち、毛糸玉が転がっていった先で、ヤーンヤーンは素敵な声の男性に出会う。
 不思議なストーリーは子供よりも、大人が繰り返し楽しめる一冊。

●試訳

そのうちにはいつも甘い桃の香りがしました。そしてそこには桃の大好きなお母さんがいました。
ある日、特別に甘くておいしい桃を一口かじったときお母さんは気付きました。
もう一人ではないということに。
白い肌にほんのりと赤い頬。桃に似た子供が生まれました。
桃に似た子供は、桃のように言葉を話しませんでした。
「うちの子は口がきけないのですか?」
「いいえ」
「耳が聞こえないのですか?」
「いいえ」
「では、どうして言葉を話さないんでしょうか?」
「……」
「もしかして、話さないんですか?」
「……」桃の種が引っかかったのか、お母さんは胸がつまりました。
「あかちゃん、あなたはどんな夢をみているの?」花の風に乗って、すやすやと子供の寝息が聞こえてきました。
お母さんは子供の世界が気になりました。でも、子供は話をしなくて、目も合わせませんでした。お母さんは待ちに待ちました。
冬が来ました。桃に似た子供のためにお母さんは編み物をしました。
「赤ちゃん、毛糸があれば何でも作ることができるのよ」その瞬間、子供が叫びました。
「ヤーンヤーン!ヤーンヤーン!(すごい、すごい!)」お母さんはびっくりしました。
子供がはっきりと「ヤーンヤーン」と言ったのですから。
いつからか村の人たちは、その子を‘編み物をするヤーンヤーン’と呼びました。村の人たちは遠くに毛糸が見えると
「もうすぐヤーンヤーンが現れるぞ」と思ったものです。雨の降る日にも、ヤーンヤーンは毛糸と一緒でした。
「毛糸が雨ですっかり濡れちゃうね」
「ヤーンヤーン」子供たちに心配に、ヤーンヤーンはにっこりと笑ってみせました。
ヤーンヤーンの頭の中はいつも毛糸のことばかり。
「ヤーンヤーン(毛糸で作りたいものがあるの)」
「ヤーンヤーン(本当に、本当に作りたいものがあるの)」ヤーンヤーンは考えに考えました。
「こんにちは。初めましてのお嬢さん」
「ヤーンヤーン(こんにちは。私はヤーンヤーン)」
「あなたはどうしてここに来たの?」
「ヤーンヤーン(私ね、私、お父さんを作りに来たの!)」

●日本でのアピールポイント

 人形のような無表情な顔と、白い空間に描かれたイラストが不思議と印象に残る絵本です。よく見ると薬ダンスや、花柄のカーテンなど韓国らしいものがさりけなく配置されており、韓国好きな人にも、韓国についてそれほど知らない人にも手に取ってもらえる絵本です。
 一見無表情なこの顔だからこそ、読者はヤーンヤーンのうれしい気持ち、さびしい気持ちを想像する。

著者:キム・スンヨン(김승연)
弘益大学視覚デザイン科を卒業。すぐに忘れてしまわれる絵本ではなく、読むたびに新しい感動があり、一生近くに置いておきたい友達のような絵本を定期的に発表していく予定。現在も心温まるストーリーを描いている。他に絵本『狐の帽子』がある。