はじめて読むじんぶん童話シリーズ②

 前回に引き続き、『はじめて読むじんぶん童話シリーズ』(彩流社刊)から『シェイクスピアのいる文房具店』(シン・ヨンラン著 小栗章訳)をご紹介します。

 お父さんが失業したり、友達との仲が悪くなったり、悩みの多いビンナムはシェイクスピアと出会い親しくなります。本を通じて想像力を養い、その想像力が苦悩を乗り越える糧となることを学ぶ成長物語です。

『シェイクスピアのいる文房具店』                                   51i2nYrzg2L._SX344_BO1,204,203,200_
 
〈まさか、パパの話していたシェイクスピアが、このおじさんだなんて?〉
 ビンナムは目を見開いて、さらに聞きました。
「じゃあ、もしかして『ヴェニスの商人』の台本はおじさんが書いたの?」
「うん」
 こんどこそ、もしやと思って聞いたのに、いかにも当然というふうにうなずいたではないですか。
〈ほんとに、すごいことになったぞ!〉
 ビンナムは、この信じられないことにしばらくポカンとしていました。おじさんは、さらにおどろくべき話をしました。
「じまん話になるけど、エリザベス1世がインドとも交換しないとおっしゃった有名な劇作家こそ、ほかでもない、このぼくなんだよ。ははは」
(本文71ページ)

「本には、科学や数学のような学問の知識だけじゃなくて、世の中のいろんな人びとがいろんな姿で生きている話がつまっているんだよ。本は、ぼくらが経験できない世界を教えてくれる知識の宝庫なんだ。でも、何も考えずに机に向かって読書しても、その宝物を手にすることはできない。運動するほうが百倍もいいさ。読書しながら深く考え、本のなかの世界を完全に自分のものにすれば、小さな宝物でも見つけられるんだ」
「それで、おじさんはどんな宝物を見つけたの?」
「空にまい上がるツバサを見つけたのさ」
「ツバサ?」
ビンナムは、グイグイ話に引きこまれ、つばを飲み込みました。
(中略)
「ここにある映画や演劇は、全部おじさんの作品なの?」
 ビンナムはさっきから気になっていた質問を投げかけて、おじさんを見つめました。まさかそんなはずはない、と思ったのですが、おじさんはまたもや、当然というようにほほえんでいました。
(本文76~77ページ)

修正シェイクスピア2