今週の本

「日本語で読みたい韓国の本」、「日本語で読める韓国の本」に新しく投稿された本です。

木のハンコ

済州島4.3事件をご存じでしょうか。1948年4月3日、済州島で、アメリカ軍政下の南朝鮮単独選挙に反発した民衆蜂起が、アメリカ軍、警察、右翼などによって弾圧され、約3万人もの島民が犠牲になったと言われている事件です。『マンヒのいえ』(みせ けい訳 セーラー出版)で有名なクォン・ユンドク作家がこの事件をテーマに描いた絵本『木のハンコ』を紹介します。少女シリを通して、事件当時の様子と平和への願いがやさしいタッチで描かれています。原題:나무 도장出版日:2016年2月29日発行元:平和を希む本(평화를품은책)ISBN-1...

2018-04-03 (火)

百の影

『誰でもない』(斎藤真理子訳 晶文社)、『野蛮なアリスさん』(斎藤真理子訳 河出書房新社)が刊行され、日本でも注目を浴びつつある作家ファン・ジョンウン。最初の短編集『7時32分 象列車』で、現実と幻想をつなぐかのような個性的な表現方法が多くの人の心を捉え「ファン・ジョンウン シンドローム」を巻き起こしました。そして2010年に最初の長編小説『百の影』(韓国日報文学賞受賞)が発表されると、その独特の文体から「ファン・ジョンウンの風」「ファン・ジョンウン スタイル」という流行語が生み出されるほど、韓国文学史においていま...

2018-03-31 (土)

究極の子 ーThe ultimate childー

2017年はチョン・ユジョンの『七年の夜』(カン・バンファ訳 書肆侃侃房)やキム・ヨンハの『殺人者の記憶法』(吉川凪訳 クオン)など韓国のミステリー作品も翻訳、刊行され、話題となりました。純文学が多いと思われている韓国ですが、ジャンル小説も増えつつあります。その中から、想像力をかきたてる描写力と感動的なラストが秀逸なミステリー『究極の子』を紹介します。原題:궁극의 아이出版日:2013年3月8日発行元:エリクシル(엘릭시르)ISBN-13:9 7 8 8 9 5 4 6 2 0 6 8 0頁数:590判型:139×...

2018-01-08 (月)

光の帝国

 韓国での映画のヒットもあり、刊行前から話題になっている『殺人者の記憶法』(キム・ヨンハ著 吉川凪訳 クオン)が、いよいよ今月末には全国の書店で発売になります。 李箱文学賞や東仁文学賞など韓国の名だたる文学賞を受賞し、たくさんの秀作を発表しているキム・ヨンハですが、日本でも大ヒットした映画「私の頭の中の消しゴム」の脚本も手がけるなど様々な方面で多才ぶりを発揮しています。 これまでの邦訳作品に『阿娘(アラン)はなぜ』(森本由紀子訳 白帝社)や『光の帝国』(宋美沙訳 二見書房)があります。「自分の運命を知らないまま生き...

2017-10-17 (火)

少年が来る

  昨年、ハン・ガン作家の『菜食主義者』(きむ ふな訳 クオン)が「マン・ブッカー国際賞」を受賞したことはまだ記憶に新しいところですが、『少年が来る』(井手俊作 クオン)がイタリアの権威ある文学賞「マラパルテ賞」を受賞したという素晴らしいニュースが昨日飛び込んできました。『少年が来る』は5.18光州民主化運動を扱った小説で、命を奪われた少年、その家族、過去の活動で受けた暴力にいまなお悩まされ続ける人々など、章ごとに様々な立場の人物をオムニバス形式で描いています。国を越えて本書が高い評価を受けたのは、ハン・ガン作家が...

2017-09-16 (土)

リナ

 北朝鮮のことがニュースに取り上げられる度に、国民はどのような生活を強いられているのだろうかと気にかかります。昨年(平成28年)、日本経済新聞お正月特別版の文芸欄「世界の『今』に迫る10冊」で、『リナ』(姜英淑著 吉川凪訳 現代企画室)が取り上げられました。「『脱北』少女の苦難 韓国の作家が悪漢小説の体裁を取りながら鋭い筆致で描出する」作品と評されました。この『リナ』は、『文藝』2014年春号で、著者の姜英淑さんと翻訳家の鴻巣友季子さんとの対談でも取り上げられている作品です。この対談で姜英淑さんは「私は小説の中で『...

2017-09-14 (木)

アンニョン、エレナ

 福岡を拠点に様々な出版活動を行っている書肆侃侃房では、昨年から「韓国女性文学シリーズ」を刊行しています。その第1弾として刊行されたのが、『アンニョン、エレナ』(金仁淑著 和田景子訳)です。「アンニョン、エレナ」「息-悪夢」「ある晴れやかな日の午後に」など、家族間の軋轢によって生じた喪失と傷を巧に表現した作品7編が収められています。著者はあとがきで、「同じ家で一緒に住む木に対しても無頓着な私」と自分のことを語っていますが、本当はとても人間に興味があって、よく観察しているのではないかと思わせる作品集です。李在明の李完...

2017-09-01 (金)

ピンポン

 第1回日本翻訳大賞受賞作品『カステラ』(ヒョン・ジェフン訳 斎藤真理子訳 クレイン)の著者パク・ミンギュさんと翻訳家斎藤真理子さんコンビによる傑作長編小説『ピンポン』(白水社)。チスにいつも殴られ、いじめられている中学2年生の僕は「釘」とあだ名をつけられ、同じくいじめの対象になっている友人は「モアイ」と言われています。ピンポンのラリーをすることで、会話と思考を続けることを覚えていく釘とモアイを中心に、大多数の無意識の加害、集団心理の怖さを奇想天外な物語で語っていきます。読み終わってから、目次の前頁にある2行「安心...

2017-07-28 (金)

スイカのプール

 梅雨も明け、夏本番が始まりました。プールや海水浴などを楽しまれている方も多いのではないでしょうか。スケールの大きな想像力で描かれたユニークなストーリーと、見ているだけで涼しくなりそうなイラストが魅力的な絵本、『スイカのプール』を紹介します。原題:수박 수영장出版日:2015年7月27日発行元:チャンビ (창비)ISBN-13:9788943309091頁数:52判型:B5●概略  暑い夏の日に冷たいスイカのプールで泳ぐという楽しい想像力で描かれたユニークな絵本。のどかな田園風景、大きなスイカのプールでのびのび楽し...

2017-07-22 (土)

朝鮮王朝最後の皇女 徳恵翁主

 日韓のはざまで、時代と歴史とに翻弄されたひとりの女性の物語を紹介します。 李氏朝鮮第26代国王高宗の末娘として生まれた徳恵翁主は、学習院に留学したころから統合失調症を発病します。対馬の宗伯爵と結婚しましたが、娘の自殺、離婚、帰国と、苦難の生涯を余儀なくされました。そんな徳恵翁主の波乱の人生を描いたのが、『朝鮮王朝最後の皇女 徳恵翁主』(権丕暎著 斉藤勇夫訳 かんよう出版)です。 韓国では70万部の大ベストセラー、ソン・イェジン&パク・ヘイル主演で映画化もされました。日本でも今月24日から公開予定です(邦題「ラスト...

2017-06-10 (土)