日本語で読める韓国の本

邦訳された韓国の小説や詩などの文学作品をはじめ、実用、絵本などさまざまな分野の邦訳本をご紹介します。

朝鮮王朝最後の皇女 徳恵翁主

 日韓のはざまで、時代と歴史とに翻弄されたひとりの女性の物語を紹介します。 李氏朝鮮第26代国王高宗の末娘として生まれた徳恵翁主は、学習院に留学したころから統合失調症を発病します。対馬の宗伯爵と結婚しましたが、娘の自殺、離婚、帰国と、苦難の生涯を余儀なくされました。そんな徳恵翁主の波乱の人生を描いたのが、『朝鮮王朝最後の皇女 徳恵翁主』(権丕暎著 斉藤勇夫訳 かんよう出版)です。 韓国では70万部の大ベストセラー、ソン・イェジン&パク・ヘイル主演で映画化もされました。日本でも今月24日から公開予定です(邦題「ラスト...

2017-06-10 (土)

日本経済新聞で韓国文学が紹介されました。

6月3日付け日本経済新聞朝刊に、韓国文学が大きく取り上げられています。『少年が来る』(ハン・ガン著 井手俊作訳 クオン)や『こびとが打ち上げた小さなボール』(チョ・セヒ著 斎藤真理子訳 河出書房新社)、『冠村随筆』(李文求著 安宇植訳 インパクト出版会)など、1970年から80年代の激動の韓国を舞台にした小説の翻訳が相次いでいます。東京の韓国文化院で開催された『少年が来る』の読書会の模様とともに、小説によって韓国の歴史を学び取ろうとする人々の様子が記事になっています。作家の星野智幸さんの言葉、「声なき人の声を拾うの...

2017-06-03 (土)

『完全版 土地』第1巻

 朴景利が25年の歳月をかけて完成させたベストセラー大河小説『土地』完全版の刊行が、吉川凪さん、清水知佐子さんの翻訳によりスタートして、話題を集めています。 李氏王朝の崩壊から日本の植民地化、解放まで約50年間を時代背景に、慶尚南道河東郡の平沙里に暮らす地主一家の没落と民族の悲哀が描かれています。400字詰め原稿用紙1万5000枚にもなる超大作です(『土地』や朴景利について、クオンのサイトに詳しく掲載されています)。昨年秋に第1巻と第2巻が刊行され、第3巻が今月(4月)下旬に刊行される予定です。 激動の時代、人々が...

2017-04-01 (土)

『関釜連絡船』

 昨年10月に「日本語で読みたい韓国の本」で紹介した韓国の国民的作家、李炳注の『관부연락선1、2(関釜連絡船)』が、橋本智保さんの翻訳で藤原書店より刊行されました。 李炳注は、『智異山』、『山河』、『その年の5月』など、歴史を素材にしたスケールの大きい、かつ哲学を込めた文学作品を数多く残しています。『関釜連絡船』は1968年4月から1970年3月まで『月刊中央』に連載された長編小説で、李炳注の作品のなかでも最高傑作だと言われています。  訳者あとがきの一部を紹介します。 歴史を素材にしつつも、国や言語、時...

2017-01-26 (木)

2016年に刊行された韓国の本

 2016年も残すところあと1日となりました。 今年、どんな韓国の本が翻訳され、出版されたのか、文学を中心にまとめてみました。 韓国現代文学で最高の大河小説と言われている朴景利の『土地』第1巻、第2巻をはじめ、拷問技術士として多くの無実の民を牢獄に追いやった父とその娘のゆがんだ関係を描いた千雲寧の『生姜(センガン)』、今年「ブッカー国際賞」を受賞した『菜食主義者』の著者ハン・ガンが光州5.18事件を舞台に鎮魂の物語を書き上げた『少年が来る』など、様々なテーマの本が出版されました。この年末には、韓国で130万部のロン...

2016-12-30 (金)

愛より残酷 ロシアン珈琲

 日中の気温も大分下がり、寒くなってまいりました。 秋から冬に移行するこの時期は、ホットコーヒーを片手にゆったりと読書を愉しみたくなります。 コーヒーにまつわる高宗暗殺未遂事件をご存じでしょうか。 「毒茶事件」といわれているものです。 ロシア語通訳官金鴻陸(キム・ホンリュク)らがコーヒーに致死量の阿片を混入して、朝鮮王朝最後の皇帝高宗の暗殺を企てます。高宗は日頃からコーヒーを愛飲していたそうですが、そのコーヒーは口にしませんでした。何も知らずに飲み干した皇太子(後の純宗)や女官らが重体となった事件です。 『私、黄眞...

2016-11-08 (火)

慟哭 神よ、答えたまえ

 前回に続き、朴婉緒さんの作品を紹介します。「これは小説でもエッセイでもなく日記です。いつか活字になることを念頭に置くとか、誰かが読むことになるかもしれない、といった心配などをするどころではない極限状態において慟哭の代わりに書いたものです」で始まる、『慟哭 神よ、答えたまえ』(加来順子訳 かんよう出版)は、医師の息子を不慮の事故で亡くした著者が、なぜ、神は私に、息子にこんな試練を与えたのか、私の何が悪いのかと神に激しく毒づき、落ち込み、生きていたくないのに生きている自分と格闘し、立ち直るまでの胸のうちを赤裸々に綴っ...

2016-08-07 (日)

新女性を生きよ

   韓国の国民的な女性作家といえば、朴婉緒(パク・ワンソ)が挙げられます。小説、随筆など、数々の作品を残し、多くの人に愛された作家です。 そんな朴婉緒の自伝小説『新女性を生きよ(原題:どこにでもあったあのスイバは誰が食べつくしたのか)』(朴福美訳 梨の木舎)をご紹介します。韓国では20万部刊行のベストセラー作品です。 1931年生まれの朴婉緒が幼少時代を過ごした故郷の朴積谷と、学齢期から大学入学までを過ごしたソウルの峴底洞が舞台となっています。朴婉緒の青春時代は、日本統治時代と解放後の朝鮮戦争に重なります。両班の...

2016-07-23 (土)

ワンダーボーイ

 暗澹たる1980年代の韓国社会を、超能力を得た15歳の少年を通して寓話的に描いた『ワンダーボーイ』(キム・ヨンス著 きむ ふな訳)を紹介します。韓国社会が暴圧的な政治状況にあった1984年秋から1987年夏までを舞台に、著者は流麗な文体と言葉のセンス、おびただしい宇宙的な数字で、様々な人々の心の痛みと、それに共感する空間を描き出しています。(原書もCHEKCCORI BOOK HOUSEでお買い求めいただけます。)『ワンダーボーイ』  父が生きた42年というのは、あまりにも短い時間です。星の数と比べると、それはな...

2016-07-03 (日)

思想の薔薇

 「韓国探偵小説の父」金来成(キム・ネソン)と、探偵小説として初めてベストセラー作品となった『魔人』(祖田律男訳 論創社)について、以前こちらでご紹介しましたが、日本語で読める彼の他の作品として『金来成探偵小説選』(論創社)があります。今回はこの中から、探偵小説「思想の薔薇」と随筆「鍾路の吊鐘」をご紹介します。「思想の薔薇」は、金来成が最初日本語で書き、その後、自身の手で韓国語に書き直したものを、翻訳者の祖田律男さんが邦訳したものです。祖田律男さんは韓国の古書市場で「思想の薔薇」のテキストを入手し、紆余曲折の末、翻...

2016-06-25 (土)