日本語で読める韓国の本

邦訳された韓国の小説や詩などの文学作品をはじめ、実用、絵本などさまざまな分野の邦訳本をご紹介します。

光の帝国

 韓国での映画のヒットもあり、刊行前から話題になっている『殺人者の記憶法』(キム・ヨンハ著 吉川凪訳 クオン)が、いよいよ今月末には全国の書店で発売になります。 李箱文学賞や東仁文学賞など韓国の名だたる文学賞を受賞し、たくさんの秀作を発表しているキム・ヨンハですが、日本でも大ヒットした映画「私の頭の中の消しゴム」の脚本も手がけるなど様々な方面で多才ぶりを発揮しています。 これまでの邦訳作品に『阿娘(アラン)はなぜ』(森本由紀子訳 白帝社)や『光の帝国』(宋美沙訳 二見書房)があります。「自分の運命を知らないまま生き...

2017-10-17 (火)

少年が来る

  昨年、ハン・ガン作家の『菜食主義者』(きむ ふな訳 クオン)が「マン・ブッカー国際賞」を受賞したことはまだ記憶に新しいところですが、『少年が来る』(井手俊作 クオン)がイタリアの権威ある文学賞「マラパルテ賞」を受賞したという素晴らしいニュースが昨日飛び込んできました。『少年が来る』は5.18光州民主化運動を扱った小説で、命を奪われた少年、その家族、過去の活動で受けた暴力にいまなお悩まされ続ける人々など、章ごとに様々な立場の人物をオムニバス形式で描いています。国を越えて本書が高い評価を受けたのは、ハン・ガン作家が...

2017-09-16 (土)

リナ

 北朝鮮のことがニュースに取り上げられる度に、国民はどのような生活を強いられているのだろうかと気にかかります。昨年(平成28年)、日本経済新聞お正月特別版の文芸欄「世界の『今』に迫る10冊」で、『リナ』(姜英淑著 吉川凪訳 現代企画室)が取り上げられました。「『脱北』少女の苦難 韓国の作家が悪漢小説の体裁を取りながら鋭い筆致で描出する」作品と評されました。この『リナ』は、『文藝』2014年春号で、著者の姜英淑さんと翻訳家の鴻巣友季子さんとの対談でも取り上げられている作品です。この対談で姜英淑さんは「私は小説の中で『...

2017-09-14 (木)

アンニョン、エレナ

 福岡を拠点に様々な出版活動を行っている書肆侃侃房では、昨年から「韓国女性文学シリーズ」を刊行しています。その第1弾として刊行されたのが、『アンニョン、エレナ』(金仁淑著 和田景子訳)です。「アンニョン、エレナ」「息-悪夢」「ある晴れやかな日の午後に」など、家族間の軋轢によって生じた喪失と傷を巧に表現した作品7編が収められています。著者はあとがきで、「同じ家で一緒に住む木に対しても無頓着な私」と自分のことを語っていますが、本当はとても人間に興味があって、よく観察しているのではないかと思わせる作品集です。李在明の李完...

2017-09-01 (金)

ピンポン

 第1回日本翻訳大賞受賞作品『カステラ』(ヒョン・ジェフン訳 斎藤真理子訳 クレイン)の著者パク・ミンギュさんと翻訳家斎藤真理子さんコンビによる傑作長編小説『ピンポン』(白水社)。チスにいつも殴られ、いじめられている中学2年生の僕は「釘」とあだ名をつけられ、同じくいじめの対象になっている友人は「モアイ」と言われています。ピンポンのラリーをすることで、会話と思考を続けることを覚えていく釘とモアイを中心に、大多数の無意識の加害、集団心理の怖さを奇想天外な物語で語っていきます。読み終わってから、目次の前頁にある2行「安心...

2017-07-28 (金)

朝鮮王朝最後の皇女 徳恵翁主

 日韓のはざまで、時代と歴史とに翻弄されたひとりの女性の物語を紹介します。 李氏朝鮮第26代国王高宗の末娘として生まれた徳恵翁主は、学習院に留学したころから統合失調症を発病します。対馬の宗伯爵と結婚しましたが、娘の自殺、離婚、帰国と、苦難の生涯を余儀なくされました。そんな徳恵翁主の波乱の人生を描いたのが、『朝鮮王朝最後の皇女 徳恵翁主』(権丕暎著 斉藤勇夫訳 かんよう出版)です。 韓国では70万部の大ベストセラー、ソン・イェジン&パク・ヘイル主演で映画化もされました。日本でも今月24日から公開予定です(邦題「ラスト...

2017-06-10 (土)

日本経済新聞で韓国文学が紹介されました。

6月3日付け日本経済新聞朝刊に、韓国文学が大きく取り上げられています。『少年が来る』(ハン・ガン著 井手俊作訳 クオン)や『こびとが打ち上げた小さなボール』(チョ・セヒ著 斎藤真理子訳 河出書房新社)、『冠村随筆』(李文求著 安宇植訳 インパクト出版会)など、1970年から80年代の激動の韓国を舞台にした小説の翻訳が相次いでいます。東京の韓国文化院で開催された『少年が来る』の読書会の模様とともに、小説によって韓国の歴史を学び取ろうとする人々の様子が記事になっています。作家の星野智幸さんの言葉、「声なき人の声を拾うの...

2017-06-03 (土)

『完全版 土地』第1巻

 朴景利が25年の歳月をかけて完成させたベストセラー大河小説『土地』完全版の刊行が、吉川凪さん、清水知佐子さんの翻訳によりスタートして、話題を集めています。 李氏王朝の崩壊から日本の植民地化、解放まで約50年間を時代背景に、慶尚南道河東郡の平沙里に暮らす地主一家の没落と民族の悲哀が描かれています。400字詰め原稿用紙1万5000枚にもなる超大作です(『土地』や朴景利について、クオンのサイトに詳しく掲載されています)。昨年秋に第1巻と第2巻が刊行され、第3巻が今月(4月)下旬に刊行される予定です。 激動の時代、人々が...

2017-04-01 (土)

『関釜連絡船』

 昨年10月に「日本語で読みたい韓国の本」で紹介した韓国の国民的作家、李炳注の『관부연락선1、2(関釜連絡船)』が、橋本智保さんの翻訳で藤原書店より刊行されました。 李炳注は、『智異山』、『山河』、『その年の5月』など、歴史を素材にしたスケールの大きい、かつ哲学を込めた文学作品を数多く残しています。『関釜連絡船』は1968年4月から1970年3月まで『月刊中央』に連載された長編小説で、李炳注の作品のなかでも最高傑作だと言われています。  訳者あとがきの一部を紹介します。 歴史を素材にしつつも、国や言語、時...

2017-01-26 (木)

2016年に刊行された韓国の本

 2016年も残すところあと1日となりました。 今年、どんな韓国の本が翻訳され、出版されたのか、文学を中心にまとめてみました。 韓国現代文学で最高の大河小説と言われている朴景利の『土地』第1巻、第2巻をはじめ、拷問技術士として多くの無実の民を牢獄に追いやった父とその娘のゆがんだ関係を描いた千雲寧の『生姜(センガン)』、今年「ブッカー国際賞」を受賞した『菜食主義者』の著者ハン・ガンが光州5.18事件を舞台に鎮魂の物語を書き上げた『少年が来る』など、様々なテーマの本が出版されました。この年末には、韓国で130万部のロン...

2016-12-30 (金)