『関釜連絡船』

 昨年10月に「日本語で読みたい韓国の本」で紹介した韓国の国民的作家、李炳注の『관부연락선1、2(関釜連絡船)』が、橋本智保さんの翻訳で藤原書店より刊行されました。

 李炳注は、『智異山』、『山河』、『その年の5月』など、歴史を素材にしたスケールの大きい、かつ哲学を込めた文学作品を数多く残しています。『関釜連絡船』は1968年4月から1970年3月まで『月刊中央』に連載された長編小説で、李炳注の作品のなかでも最高傑作だと言われています。

 

 訳者あとがきの一部を紹介します。

 歴史を素材にしつつも、国や言語、時代を超えた普遍的な世界を追求する李炳注の作品は、半世紀が過ぎようとするいまでも色褪せることなく、今日も暴力と戦争に満ちた世界に生きる私たち読者にメッセージを送り続ける。国とは何なのか、そこで人が正しく生きるとはどういうことなのか、と問いを投げかけ、考えさせてくれる場である『関釜連絡船』が、今私たちに必要な物語であるのは間違いない。韓国文学という枠のなかに閉じ込めることなく、もっと自由に、世界文学としての『関釜連絡船』を愉しみ、味わっていただけたら訳者としてこれ以上の幸せはない。(『関釜連絡船』 橋本智保訳 藤原書店)

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