2016年がスタートしました。
早速、仕事始めを迎え、通勤電車に揺られている方も多いのではないでしょうか。
リニューアルオープンしたK-文学.com、今週の1冊は、『日本語で読みたい韓国の本-おすすめ50選』第4回より、『メンタル・リハーサル-通勤30分の奇跡』をご紹介します。
●概略
人生を変えるには、まず通勤時間から!
韓国で大人気のビジネス本の著者が、世界的なリーダーのエピソードや自らの体験を踏まえつつ、仕事と人生をつなぐ「メンタル・リハーサル」を提案。その最大のポイントは、通勤時間にある。会社へ向かう電車のなかで、たった30分でいいから「メンタル・リハーサル」を実践してみよう。「メンタル・リハーサル」とは、これからおきる出来事について頭のなかでシュミレーションし、「備える」こと。1日のはじまりのセレモニーとして習慣づけることで、仕事だけでなく人生とのつきあい方がわかってくる。ほかにも、プラスの結果のイメージの仕方、散発的に浮かぶアイデアの整理法など、具体的なヒントが散りばめられている。目からウロコのビジネス書。
●各章のあらすじ
まず著者は、日々忙しく生きる現代の社会人に、なぜメンタル・リハーサルが必要かを第1 部、第2 部でていねいに説きおこす。ほかでもない通勤時間にこだわるのはなぜなのか。「メンタル・トレーニング」ではなく、「リハーサル」とする意図は? 心理学上の学説、科学的な実験結果に加え、世界的ビジネスマン、作家、スポーツ選手など成功者の事例がふんだんに盛りこまれていることで、メンタル・リハーサルの必要性を自然に実感できる。第3部では、その具体的実践法を説き、生活のなかにメンタルリハーサルをとりいれることは、仕事だけでなく人生に「備える」作法だと語る。第4 部では仕事、人生、未来にどう向きあうかを考える。
● 試訳
「1日30分」というと、別に1日のなかで都合のいい時間帯を活用すればいいだろう、なんでまた出勤時間なんだ、仕事の合間や退社時間の30分でなにが悪いんだ、と反論する人もいるだろう。
なによりもまず、規則的であることがポイントだ。1日の流れのなかでみると、規則的に確保できるほぼ唯一の時間帯が出勤時間なのである。ほとんどの人は習慣的に、決まった時間帯、決まったパターンで出勤している。一方、退社時間となるとバラバラなことが多い。残業があるかもしれないし、飲み屋に直行、ということもありえる。出勤は規則的、反復的で、メンタル・リハーサルの儀式にはもってこいなのである。
2つ目の理由は、脳が完璧な活動を行える時間帯だからだ。人間にとって最も理想的な睡眠時間帯は、午後11時から翌日の午前5時とされている。つまり、午前5時の起床がベストなのだ。加えて、5時に目覚めてから1時間ほど経過した、午前6時から8時までが、脳が最も明晰になる時間であり、集中力と判断力は昼間の3倍にも達するといわれている。
3つ目に、通勤が1日のスタート地点だということを挙げよう。スタートは計画あってのもの。どんな計画を立てるかに、その日1日はかなり左右される。また出勤時間は、計画だけでなく点検のチャンスでもある。1日のうちにしなければならないことを洗いだし、対策をとっておくことはかなり大きな意味をもつ。出勤時間をただの移動だけで終わらせると、いきなり仕事に突入しかねない。その日の仕事が本格的にはじまってしまうのだ。だからこそ、メンタル・リハーサルが有効なのである。
「通勤、1日30分の奇跡」(本文63ページ)
●日本でのアピールポイント
「自己啓発本」というと、どうも日本ではうさんくさい印象をもたれがち。一方「ビジネス本」となると、世界的人物の壮大な成功譚か、はたまた話し方、聞き方、書類の作り方など仕事上の細かい豆知識か。いずれにしてもストライクゾーンがけっこう狭そうで、よほど仕事に悩んでないかぎり、手をのばしづらいというのが正直なところだろう。
本書はちがう。韓国らしいダイナミズムで、日々の生活習慣を変えると、人生への向きあい方も変えられるという、いわば“お手軽なポジティブさ”が堪能できる。著者の経歴にあるとおり、新入社員から企業の経営者まで幅広い読者を想定して書かれているからだろう。さらにいえば、ブラックバイトの学生からダブルワークに疲れたシングルマザーまで。“自分の日々にも生かせるかもしれない”と思わせてくれるハードルの低さが最大のウリだ。装丁を女子力高めなものにすれば、男性だけでなく女性にも受けいれられるだろう。
著者:チョ・グァンイル(조관일)
江原大学大学院博士課程(経済学)修了。韓国マルティアシップ開発院院長、チョ・グァンイル創意経営研究所代表。農協中央会常務、江原道政務副知事、江原大学客員教授、テレビ講座講師、トークショー司会者など、多彩な経歴をもつ。新入社員から一流企業経営者に至るまで、さまざまな層の“仕事人生”を勇気づける著作で知られ、自己開発本ジャンルの独走者と呼ばれている。主な著作に「秘書のようにやってみろ」「新入社員の条件」「役員の条件」「とんでもマナー」「マルティアシップ」「しゃれた言い回し」「職場を去るときに後悔する24のこと」など。