K-文学レビューコンクールに寄せて「レビューと感想文」

 ブックレビュー(書評)は自由なものです。書きたいように書けばいい。こうでなければ、という決まりはありません。ありませんが、でもレビューは読む人があってのもの。自分だけのための日記とは違います。
 また、読書感想文ともちょっと違うと思います。感想文は文字通り、その本を読んで感じたことや思(想)ったことを書きますね。内面を告白するようなところがあります(感想文の強要が読書ぎらいの原因となっている、という意見には一理あると思います)。レビューは、どう感じたか、どう思ったかなんて書かなくてもいい。それどころか、感じもしなかったこと、思いもしなかったことを書いてもいい。

 わたしはレビューを書くとき、3つの条件をクリアするよう心がけています。
 1 それがどんな本であるのかがわかるように書く。たとえば小説なのか、エッセイなのか、ビジネス書なのか、学術書なのか。たとえばセザンヌについての本であっても、画集、伝記、評論、エッセイ、小説、といろいろありえます。
 2 著者やその本についての客観的な情報を書く。新人なのかベテランなのか、どんな評価を受けている著者なのか。
 3 レビューアー(書評者)自身の評価を書く。レビューは批評です。ほめなければいけない、ということはありません。ただし肯定する(ほめる)にしても否定するにしても、レビューを読んだ人が納得できる論拠と論理が必要です。

 もうひとつ意識しているのは、どんな人が読むか。18歳の若者に向けての文章と、60代のベテランに向けての文章では、文体も使う言葉も違いますよね。
 書いた文章は何度も読み返して、少しでも違和感があったら修正しましょう。ほかの表現ができないか、辞書を引いて考えましょう。文章を書くこともスポーツと同じ。何度も繰り返し練習することで慣れてきます。

(著作家 永江朗)