楽しみながら文学に親しむ児童書店「책과 아이들」(韓国通信)

 創業20年以上になる釜山の児童書専門書店「책과 아이들(本と子どもたち)」をご紹介します。書架に並ぶ販売用の本は実に13,000冊。無料で利用できる図書室やギャラリーもあり、子どもたちが楽しみながら文学に親しめるよう様々な活動も企画しています。

 1997年に書店を立ち上げた妻のカン・ジョンアさんと、大企業を退職して書店業に合流した夫のキム・ヨンスさんが共同代表として運営しています。もともとエンジニアだったキムさんは現在、「全国トンネ(町)書店ネットワーク」の会長も務めています。オープン当初は小さな空間でしたが拡張移転を重ね、3店舗目となる現在の建物は5階建て。緑あふれる庭もあります。

190223外観

190223庭1

 

 

 

 

 

 

 

 

 1階は絵本、中2階には読み物を中心とした児童書がぎっしり。読者の年齢別、テーマ別、作家別などに分けて陳列されていて、韓国人の絵本作家コーナーにはペク・ヒナさんやアンニョン・タルさん、イ・オクベさんなど日本でも人気の作家の作品がずらり。日本の絵本の翻訳書も多数並んでいました。昔は西洋の絵本が多かったそうですが、韓国と情緒的に似通っている日本の絵本は子どもたちも親しみやすいとのことで、少しずつ増やしたそうです。店に置く本を選ぶ基準をキムさんに尋ねてみると、まず「全集は扱わない」との答えが返ってきました。作家が制作した本は大きさやページ数がさまざまなのに、全集として販売するにはそれらを統一するため本来の個性が失われることや、韓国の全集は商業的だと感じるため、というのが理由でした。そのため扱っている本はすべて単行本。児童書の研究会が作成する目録を参考にしたり、出版社や作家、外国作品であれば翻訳者を見て判断したりして、取り扱う本を選んでいるそうです。

1902231階

190223新刊絵本

 

 

 

 

 

 

 

 1階の奥には、「郵便ポストの数と同じくらい多くの図書館がある国になれば」との願いを込めて設けられた図書室があり、販売用のものとは別に多くの本が並んでいます。大きなガラス戸を開け放つと、テラスや庭とつながる開放的な空間になります。室内にはピアノや舞台用の照明機器があり、子どもたちが童話をもとにした演劇を発表したりもするそうです。アドリブも交えてとても上手に演じるのだとキムさんが説明してくれました。図書室の名前「구름빵」(ふわふわくもパン)は、ペク・ヒナさんの同名の絵本からとったそうです。

190223昔の絵本コーナー

190223図書室

 

 

 

 

 

 

 

 3階の広い空間は、幼稚園児や小学生たちがクラス単位で「書店に遊びに行く」感覚で訪れ、昔話を聞いたり、映画を見たり、詩にメロディーをつけて歌ったりといった文化体験ができるようになっています。昔話を披露するのはカンさんの80歳になるお母さん。20年前から語り部として活動を続けていて、魅力たっぷりの語りは子どもたちに大人気だそうです。3階にはほかにも多目的に利用できる部屋がたくさんありました。

190223昔話を聞かせる部屋

190223多目的室

 

 

 

 

 

 

 

 4階はワークショップルーム。キッチンや浴室もついていて宿泊も可能です。ここにも多くの本が備えつけらえていて、宮沢賢治の絵本や翻訳本、LP盤とプレーヤーもありました。釜山出身の作家を紹介するパネルもずらり。

190223ワークショップルーム2

190223ワークショップ宮沢賢治

 

 

 

 

 

 

 

 5階のギャラリーでは原画展や写真展が開かれます。以前は自分たちで展示内容を企画していましたが、最近は依頼を受けて空間を貸すことが多いのだとか。この日はイラストレーターHelen Ahpornsiriさんの原画展の準備をしていました。シダ植物を押し花のようにして描いた非常に繊細な作品です。

190223ギャラリー

190223ギャラリー2

 

 

 

 

 

 

 

 その他、作家を招いての討論会や講演、本の読み聞かせ、読書感想文の発表、詩の鑑賞、読書キャンプなど、カンさんが中心となって多種多様な活動を企画、運営しています。本や読書を軸としたこうした活動は、子どもたちの感性や想像力を豊かにするのに大いに役立つでしょう。地域に根ざし、地域に求められている書店だと思いました。(文・写真/牧野美加)

 

책과 아이들

釜山市蓮堤区教大路16番ギル20

(051)506-1448,1540

定休日:日曜、祝日、月曜

営業時間:9時30分~19時30分(土曜は9時~19時)

http://cafe.daum.net/bookandkid

2019-02-23 (土)