メイド・イン・カンナム(메이드 인 강남)

『메이드 인 강남』
原題
메이드 인 강남
著者
チュ・ウォンギュ
出版日
2019年2月25日
発行元
子音と母音
ISBN
9788954439725
ページ数
192ページ
定価
13,000ウォン
分野
小説

●本書の概略

欲望と虚飾が交錯する街、カンナムで、著名人を巻き込んだ殺人事件が発生する。法の目をくぐりぬけ事件を隠蔽しようとする者と、真実を暴くために富と権力を振りかざす者。華やかさの裏側で繰り広げられる、闇の世界の攻防戦を描いた長編小説。

完成間近のペントハウスで複数の死体が発見された。麻薬使用の形跡。飛び散る血痕。目を見開いたまま横たわる10名の男女の全裸死体。その中に人気歌手「モンキー」の姿があった。醜聞に繋がりかねない犯罪事件の発生を受け、それを事件性のないものに「デザイン」し直す闇の弁護士、「デザイナー」が召集される。いかなる価値観にもとらわれず、あらゆる感情を排除できる人物。人道的な価値判断を度外視し、機械的に事件を処理できる人物。それが、ローファームYで秘密裏に任命されたデザイナーに求められる資質である。一流デザイナーのミンギュは、もっとも話題性が高いとされるモンキーの死を自殺として「デザイン」した。

しかし、カンナム一帯を牛耳るモンキーの父親がジェミョン刑事のもとを訪れ、息子の死は自殺ではないと主張し、さらには多額の報酬と引き換えに、真犯人を殺害するよう迫る。賭博に溺れたジェミョンが公金横領に手を染めているという事実をすでに把握していたのだ。

一方、ミンギュはモンキーと親しかった高級コールガール、ヘジュへの接触を図る。事件当日、モンキーとともに現場にいた彼女の姿を防犯カメラがとらえていたのだ。事件の真相を世間の目から匿うよう「デザイン」しなくてはならないミンギュは、真実を封じるべくヘジュを買収しようとするが、コールガールたちを取りまとめる男の存在が浮上する。「黒犬の王」と呼ばれるその男は、標的をしとめるためには残忍な手段をも辞さない狂犬のような人物だった。事件の鍵を握る「黒犬の王」と彼を追うジェミョン、ミンギュの攻防戦が繰り広げられ、事件の全貌が、やがて明らかになる。

●日本でのアピールポイント

韓国屈指のセレブの街として、日本人観光客の間でも人気の高いカンナム。富や名誉、権力を欲する人々、それらを誇示する人々が闊歩するその街を舞台に描かれた本作品は、華やかな世界の裏に隠された冷酷な闇の世界に読者を誘い込む。

日本でも連日ワイドショーを賑わせる、政治、経済界の大物がかかわる不祥事や、芸能人の薬物乱用事件に不法賭博。そんな日本人にもなじみ深いテーマが扱われているためか、隣国の物語ながらまるで違和感がなく、ミステリアスなストーリー展開も相まって、人間のもつ「スキャンダルへの好奇心」を強く刺激する。そして、全体を通して飛び交う陰謀と巧みな情報操作に、もしかすると、こんなことが実際に行われているのかもしれない、という若干の恐ろしさと警戒心をも抱かせる一冊である。

作成:藤原友代

著者:チュ・ウォンギュ
ソウル生まれ。2009年より小説の執筆を始める。第14回ハンギョレ文学賞を受賞した『列外人種 残酷史』をはじめ、長編小説『半人間宣言』『クリスマス・キャロル』『櫓』、青少年向け小説『アジト』など多数の作品を発表。2017年には故キム・ジュヒョクの最後の主演ドラマ『アルゴン』の脚本も手がけた。