『闘鶏シャモ』(チョ・ジェド著)

忠清南道の農村の美しい自然と四季を背景に、誰もが少年時代に経験する友情や別れ、生と死、未知の世界に対する憧れや好奇心を生き生きと描いた、少年の成長物語を紹介します。

原題:싸움닭 샤모
出版日: 2012年6月25日
発行元:小さな森(작은숲)
ISBN-13:9788997581030
ページ数: 240
版型:133×195㎜
分野:文芸/児童文学

闘うシャモ

 

 

 

 

 

 

 

 

●概略 

 作家チョ・ジェドが自らの生い立ちをもとにして書き上げた児童文学三部作の第一部。「早く大人になりたい」と願う少年アン・ピョンデが、さまざまな出来事を通じて少しずつ成長していく姿が生き生きと描かれている。忠清南道の農村の美しい自然と四季を背景に、誰もが少年時代に経験する友情や別れ、生と死、未知の世界に対する憧れや好奇心、そして大人社会の現実が各話に散りばめられ、読む者を引き付ける。

●主な登場人物

・アン・ピョンデ

忠清南道の農村に住む少年。厳格な父親としっかり者で優しい母親、弟、妹と暮らしている。好奇心が旺盛で、一度こうしたいと思ったら止められない性格。

・シン・ビョングン

ピョンデの親友。鉱山で働きながら畑を耕す父親、妹ビョンスクの三人で暮らす。気の優しい少年だったが、ある事件をきっかけに変わっていく。

・ナムジュ

ピョンデの友人

・チェ・ギョンナク

ピョンデの友人

・ペク・チュンギ

ピョンデの小学校の担任教諭。村で下宿をしており、ピョンデの父親と仲がいい。

・カン・チュンジャ

村はずれの家に母親と二人で暮らしている両足が不自由な女性。ピョンデが唯一の話し相手。

●各章のあらすじ

豚をさばいた日

村の男たちが豚をさばこうとしていた。主人公ピョンデをはじめ好奇心いっぱいの子どもたちが周りを取り囲む。屠殺を指揮するのはビョングンの父親だ。酒癖の悪い夫に愛想を尽かしたビョングンの母親は三年前に家を出て、それ以来ビョングンの家は酒浸りの父と幼い妹の三人暮らしだ。

秘密のアジト

ピョンデはビョングンと岩陰の地面に穴を掘って二人だけの秘密のアジトを作ることにした。イカの骨やガラス玉、牛の首に付ける鈴、カエルのように見える石、メンコ……アジトに宝物を運び、二人はそこでこっそり夜を明かそうと計画する。

僕たちは海を見に行った

ピョンデは、担任のペク・チュンギ先生の下宿で、先生から故郷の海辺の村の話を聞く。海が見たくてたまらないピョンデはビョングン、ギョンナク、ナムジュを誘い、山を越えて西へ西へと海を目指して歩いて行く。

ハイタカのヒナ「名校長」

ピョンデとビョングンはせっせとカエルを捕って、自分たちが育てているハイタカのヒナ鳥二羽の餌にしていた。ハイタカのヒナたちの名前は「名校長」。有名の「名」に自分たちが知っている一番偉い人物「校長」を合わせた名前だ。

不思議と人を惑わせる話-チュンジャ姉さんと僕

ふとしたきっかけでピョンデは村はずれに住んでいる足の不自由なチュンジャ姉さんと知り合いになった。柿の花が大好きで心優しいチュンジャ姉さんは、ある日ピョンデに村の青年パク・ジャングァンから来た恋文を見せ、頬を赤らめた。そんな姉さんが突然首を吊って自ら死を選んだ。その日からジャングァンの身にも異変が起こる。

闘鶏シャモ

ピョンデは学校の印刷室で見た動物図鑑のシャモの写真に魅せられる。ピョンスンおじさんの家にシャモがいるのを見たピョンデは母親にねだって自分の家の雌鶏とシャモを交換することに成功する。

新しい母親

ビョングンの母が家を出て五年。父親が新しい母親を連れて来た。慶尚道訛りの連れ子のソンジャは十歳。新しい母親は父がいない間、酒を飲み煙草を吸って家事もしない。新しい母親になじめないビョングンは次第に無口になり荒れていった。

春の日

小学校最後の学年を迎えたピョンデは一学年下の女の子と二人、郡の弁論大会に出ることになった。二人で弁論大会の練習をしていると、なぜかピョンデは女の子のことが気になり、胸がドキドキする。

この世の向こう側

家出をしていたビョングンが帰って来た。行くあてのなかったビョングンは、くず拾いの男たちと行動を共にし、男たちと盗みに入ったところを警察に捕まったのだ。

新たな道

小学校の卒業を控えて、ピョンデは両親の勧めでソウルの中学校に進学することになった。未知の世界への期待と不安、故郷の村や自然、そして友人たちとの思い出。さまざまな想いが交錯する中、ピョンデは雪が積もった山道をソウルに向けて進んで行く。

 

●日本でのアピールポイント

1960年代の農村の子どもたちを主人公にした本作は、韓国でも日本でもすでに失われつつある世界が繰り広げられている。自然の中で成長する少年期の感性が生き生きと描かれ、パソコンとスマートフォンに支配された現代の子どもたちに欠けているものは何かを気づかせてくれる。著者が自分の生い立ちをもとに書いているため、読者も主人公ピョンデが出会うさまざまな出来事にワクワクし、共に成長していくような気持ちにさせてくれる。障がいを持ったチュンジャ姉さんの話、親友ビョングンの過酷な経験などからは、単なる児童文学にとどまらない著者の問題意識を感じる。本作に続いて、中学生になったピョンデがどのように成長していくのか、第二部『不良少年』を読まずにはいられない。

著者:チョ・ジェド(조재도)

1957年忠清南道の扶余で生まれ、青陽郡で育った。大学卒業後、中学、高校の教師となり、1985年『民衆教育』誌で初めて作品を発表。教育民主化運動に関係したため解職処分を受けるが、1994年に復職。20年あまり教鞭を取りながら創作活動を続けた。『愛しているなら』『自転車に乗った大統領』『噛み痕』といった児童文学書のほか、教育エッセイなども著している。
 
 
 

 

2018-12-08 (土)